【小児医療の新たな可能性】西洋医学と東洋医学の統合でより良い医療を

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西洋医学と東洋医学の融合〜より良い医療を目指して〜

病気が「治る」とは、単に症状が消えることだけを指すのでしょうか?

本当の意味での「治る」とは、身体だけでなく心の面でも痛みや違和感が和らぎ、患者さん自身が健康を実感できる状態ではないでしょうか。

地域医療の根本的な目的もまた、単に病気を治療することではなく、患者さんの生活の質(QOL)を向上させることにあるはずです。

私は小児外科医として30年近く臨床に携わり、数多くの手術や治療を手がけてきました。西洋医学の視点に立ち、客観的な指標に基づいた治療を実践することの大切さを日々実感しています。

しかし、地域医療に関わるようになり、医学書に載っている典型的な病態だけでは説明しきれない「グレーゾーン」の存在を強く感じるようになりました。

そこで私は、西洋医学と東洋医学、それぞれの強みを組み合わせることで、より包括的な医療が提供できるのではないかと考えるようになりました。

実際に両者の視点を取り入れた診療を行うことで、患者さん一人ひとりに寄り添った、より柔軟で細やかな治療が可能になることを実感しています。

西洋医学と東洋医学の違いと強み

西洋医学は、目に見える症状を科学的に分析し、客観的なデータに基づいて治療を進めることが特徴です。

例えば、炎症が起きている箇所に対して薬を投与したり、手術で物理的に原因を取り除いたりすることで、症状を改善へと導きます。このように、病気の原因を明確にし、的確に対処できるのが西洋医学の強みです。

一方で、検査上異常が見つからないにもかかわらず、患者さんが違和感や痛みを訴えるケースも少なくありません。数値や画像では捉えきれない不調が存在することも、臨床の現場ではよくあります。

対照的に、東洋医学は「体全体のバランス」や「エネルギーの流れ(気・血・水)」を重視し、症状の根本的な原因を探るアプローチを取ります。例えば、同じ腹痛でも、体質や生活習慣、ストレスの有無などを考慮しながら治療を進めるため、より個々の状態に寄り添った対応が可能になります。

腹痛へのアプローチ〜西洋医学と東洋医学の視点〜

私の診療では、腹痛を訴える子どもたちを多く診察します。

西洋医学的なアプローチでは、エコー検査を行い、盲腸炎や腸重積などの器質的な異常がないかを確認します。しかし、検査では異常が見つからないのに腹痛が続くケースも少なくありません。

ここで東洋医学の視点を加えると、「腸と脳のミスコミュニケーション」による機能的な問題が原因かもしれないと考えることができます。例えば、ストレスや自律神経の乱れが腸の動きを鈍らせ、痛みや違和感を引き起こしている可能性があるのです。

お腹が冷えている、血流が悪いといった状態が影響している場合もあり、こうしたケースでは、お腹を温めることや、漢方薬を用いて腸の動きを整えることで症状が改善することが多くあります。

近年の研究では、Rome IV分類(Rome Foundation)において、腸と脳の連携がうまくいかないことで痛みを過剰に感じたり、ストレスとして捉えたりすることがあるとされています。

当院(小森こどもクリニック)でも、認知行動療法の考え方を取り入れながら、東洋医学的なアプローチと組み合わせることで、腹痛の改善を目指しています。実際、気・血・水のバランスを整える漢方薬を処方することで、劇的に症状が改善するケースも少なくありません。

数値では測れない「状態」を診る医療

また、「むくみ」についても西洋医学と東洋医学では捉え方が異なります。

西洋医学では、むくみを「浮腫」や「術後の水分移動」として説明し、尿量を増やす治療などを行います。しかし、同じ治療をしても、むくみが取れやすい人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか?

東洋医学では、むくみを「水毒」や「気・血の異常」として捉えます。手足の冷えや血流の悪さ、エネルギーの巡りの違いが影響していると考え、それに応じた治療を行います。この視点を加えることで、より総合的に健康を捉えることが可能になります。

手術を受けた患者さんの中には、「手術は成功したのに体調が優れない」と訴える方がいます。一方で、検査数値が完璧でなくても「体調がいい」と感じる人もいます。これは、東洋医学でいう「気(生命エネルギー)」「血(血液循環)」「水(体内の水分)」のバランスが関係しているのかもしれません。

近年の研究では、気功や鍼灸治療が自律神経に影響を与え、ストレスの軽減や慢性的な痛みの緩和に役立つことが報告されています(参考:日本東洋医学会)。こうしたアプローチをうまく取り入れることで、より多角的な医療が可能になるのではないでしょうか。

統合医療が切り拓く未来

こうした経験を通じて、西洋医学と東洋医学の融合による「統合医療」の可能性を強く感じています。

西洋医学が得意とする「数値や画像で診る医療」と、東洋医学が得意とする「患者さんの状態や体質を診る医療」。この二つを組み合わせることで、より患者さんに寄り添った医療が実現できるのではないでしょうか。

地域医療の現場では、特にこのような統合的なアプローチが求められています。実際に、私自身も統合医療の考え方を取り入れることで、多くの患者さんの症状が改善するのを目の当たりにしています。

患者さん一人ひとりの体質や性格、生活習慣を考慮しながら、きめ細やかな医療を提供することが、病気の予防や健康維持、さらにはQOLの向上につながると確信しています。

西洋医学の立場からも東洋医学の価値を再認識し、より良い医療の形を模索していくことが、これからの医療において重要な課題となるでしょう。今後も、それぞれの良さを生かしながら、より良い医療を目指していきたいと思います。

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この記事を書いた人

小森塾塾長

小森塾塾長 小森広嗣

小児科医師(小森こどもクリニック理事長、院長)、人財育成コンサルタント、「7つの習慣実践会」認定ファシリテーター

小児医療、健康教育、人財育成を通し、日本を元気にすること!!が使命です。本質を考え、悩みに方向性を与える力を大切に診療、教育活動をしています。

志ある仲間と共に成長の階段を登りながら、愛のある医療チーム創りを目標に、小森塾を開校しました。

ストレングスファインダー:未来志向、成長促進、戦略性、達成欲、学習欲

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