毎日の仕事がただの作業に感じるあなたへ〜ドラッカーの「3人の大工の話」が教えるやりがいの見つけ方〜

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仕事に「意味」を見出すということ

皆さんは、日々の仕事にどんな意味づけをしていますか?「ただの作業だから」「指示された仕事だから」と流してしまうこともあれば、「誰かの役に立っているんだ」と思いながら取り組むこともあるでしょう。この違い、実は私たちの幸福度に大きな影響を与えています。

今日は、マネジメントの神様と呼ばれるピーター・ドラッカーの「3人の大工の話」を通して、仕事に対する姿勢や考え方について考えてみましょう。そして、この考え方が日々の仕事にどれだけの変化をもたらすのか、医療現場の具体例を交えてお話しします。

3人の大工の話 〜同じ作業に見出す異なる価値〜

まずは、ドラッカーの「3人の大工の話」をご紹介します。この話には、同じ「石を積む」という仕事をしている3人の大工が登場しますが、彼らの仕事に対する考え方は全く異なります。

1人目の大工「ただの作業」として捉える

1人目の大工は、「ただ石を積んでいるだけ」と答えました。彼にとって、この仕事は単なる作業に過ぎず、特別な意味や価値を見出していません。「言われたからやるだけ」といった感覚です。やりがいや充実感はほとんど感じていないでしょう。

2人目の大工 「生活のために働いている」

2人目の大工は、「生活のために働いている」と答えました。彼はこの仕事が、自分や家族の生活を支える手段であると考えています。仕事に対する責任感はありますが、そこに「自分の人生の目的」としての意味を見出しているわけではありません。日々の生活を支えるための「安定した仕事」として捉えています。

3人目の大工「大聖堂を建てている」

そして3人目の大工は、「大聖堂を建てている」と答えました。彼は今自分がしていることが大きな目的の一部であり、多くの人に喜びをもたらすものだと信じています。彼にとってこの仕事は、未来に残る価値を創造し、多くの人に貢献する誇りあるものです。彼はこの信念に支えられながら、やりがいと満足感を持って日々の仕事に励んでいます。

同じ「石を積む」という行為が、ただの作業にもなり、生活の糧にもなり、あるいは壮大な夢の実現に貢献するものにもなり得るのです。

医療現場での例〜看護師さんが吸入処置に見出す「意義」の違い〜

この3人の大工の話を、今度は医療現場に置き換えてみましょう。たとえば、看護師さんが患者さんに吸入処置を行う場面を考えてみます。この一見シンプルな処置も、そこに込められる考え方によって全く違った意味を持ちます。

1人目の看護師「医師からの指示だから」

1人目の看護師さんは、「医師からの指示だから」と考えています。彼女にとって、この処置は与えられた仕事の一環であり、特に深い意味を見出しているわけではありません。「言われたことをこなす」という感覚で、淡々と業務に取り組んでいます。

2人目の看護師「喘息治療に必要だから」

2人目の看護師さんは、「喘息治療に必要なことだから」と考えています。彼女は、この処置が患者さんの健康を支えるために重要であると理解し、仕事に責任感を持って取り組んでいます。医療従事者としての自覚を持ち、患者さんのために「やるべきこと」を行っているという意識があります。

3人目の看護師「患者さんとその家族の幸せに貢献したい」

そして3人目の看護師さんは、「この吸入のおかげで、この子が今夜ぐっすり眠れ、その家族が安心して明日を迎えられる」と考えながら処置を行っています。彼女は、元気な子どもが増えればその分社会全体も明るくなると信じており、医療チームの一員として社会や未来に貢献していることを誇りに思っています。このように、深い意義とやりがいを感じながら仕事に向き合っているのです。

全く同じ処置を行っているのに、物の見方が変わるだけで、感じ方も満足感も大きく変わるのです。

私たちのチームでの実践談「清らかなエネルギー」で患者さんと向き合う

実は、私たちの医療チームでもこのマインドセットを大切にしています。どんなに小さな作業であっても、掃除をする、ものを準備する、片付ける、整理整頓する。これらの一つひとつに心を込めることで、患者さんと向き合うための「清らかなエネルギー」が生まれると信じています。

日々の仕事の中で、このマインドをチーム全員で共有し、互いに意識を高め合っています。こうした積み重ねが、患者さんの前に立つときの姿勢に現れ、真摯に向き合うための土台になるのです。

脳科学的にも証明されている「ストレスホルモン」と「幸せホルモン」の関係

さらに、脳科学の観点からも、この「意味づけ」の違いが私たちに与える影響は証明されています。精神科医の樺沢紫苑先生によると、同じ作業をしていても、ストレスを感じながら行うと「ストレスホルモン」であるコルチゾールが分泌され、心身への負担が増すのです。これは、ただの義務感や苦痛を感じながら作業をこなすときに起こりやすい状態です。

一方で、「この仕事には意味がある」と感じ、楽しさややりがいを見出しながら取り組むと、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンやドーパミンが分泌され、心も体も健康的に働くことができるのです。つまり、自分の仕事に意義を感じ、心から「やりがい」を持って取り組むことで、私たちの脳も体もよりポジティブで健康な状態を保つことができるのです。

マインドセットの力〜どんな気持ちで仕事に向き合うか〜

ここで重要なのは、仕事に対する「マインドセット」です。同じ作業でも、「どうせやらなくてはいけないから」と辛い気持ちでこなすのか、「誰かの役に立っている」という誇りを持って行うのかで、私たちの心のありようが大きく変わってきます。

やっていることは全く同じなのに、そこに込める意味が変わるだけで、世界観がまるで違うものになるのです。外から見れば同じ作業に見えるかもしれませんが、その人を中心に流れるエネルギーは全く違うものになるでしょう。そして私たちも、このような清らかなエネルギーを持って仕事に向き合える世界を目指したいと考えています。

特に、目の前の作業が辛くなり、負荷がかかっていると感じるときこそ、この考え方を思い出してみてください。それが、今の苦しさを乗り越える力になるかもしれません。

まとめ 大聖堂を建てる気持ちで日々の仕事に向き合う

私たちの毎日は、決して楽しいことばかりではありません。どんな仕事にも、辛いと感じる瞬間や、淡々とこなさなければならない作業はあるものです。でも、そのときに少し視点を変えてみませんか?「この仕事が誰かの役に立っている」「この小さな作業が、大きな結果につながる」と思えるだけで、私たちの心は温かくなり、充実感が増していきます。

仕事の意味づけは、自分自身で決めるものです。どうせなら、同じことをするなら、自分が「大聖堂を建てている」と思えるような気持ちで日々の仕事に向き合ってみてはいかがでしょうか?それが、充実した幸せな生き方につながるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

小森塾塾長

小森塾塾長 小森広嗣

小児科医師(小森こどもクリニック理事長、院長)、人財育成コンサルタント、「7つの習慣実践会」認定ファシリテーター

小児医療、健康教育、人財育成を通し、日本を元気にすること!!が使命です。本質を考え、悩みに方向性を与える力を大切に診療、教育活動をしています。

志ある仲間と共に成長の階段を登りながら、愛のある医療チーム創りを目標に、小森塾を開校しました。

ストレングスファインダー:未来志向、成長促進、戦略性、達成欲、学習欲

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